学校生活
――中学生でアトピーの診断、部活のユニホームが着られなくなっていく
小学生の頃から肌が乾燥しやすい傾向はありましたが、アトピーの診断を受けたのは中学に入学して間もない時期でした。診断されたことに不安はありましたが、当時は軽症であったので「いつかは治るんだろうな」という気持ちの方が強かったです。しかし、症状は、時間が経つにつれ悪化する一方でした。当時は野球部に所属していましたが、ユニホームの化繊で肌がかゆくなるので苦労しました。なんとか中学卒業までは野球を続けましたが、高校入学後はユニホームを着るのも難しく、陸上部で長距離走に取り組むことにしました。汗をかくと乾燥してかゆみが悪化しやすいので、走り終わった後にこまめに汗を拭きとるなどの対策をしていました。
――ほぼ1年中、アトピーの症状に悩まされる日々
アトピーの症状は、特に寝る前のかゆみがひどかったですが、自習中もかゆみが気になって注意散漫になることが多かったです。季節的には夏が最も辛くて、体温が高くなってかゆみを感じやすく、さらに、かいた部分が傷になって血や滲出液が出ているのを見られるのも嫌でした。冬は乾燥して頭部のかゆみがひどく、春は花粉症もあって顔が赤くなるので、ほぼ1年中アトピーに悩まされる状況が続いていました。
――なかなかアトピーが改善しないことに不安を感じ、病院を転々とする
診断当初は自宅近くのクリニックに通っていましたが、「もっと自分に合う治療はないか」と20歳で就職するまでは、病院を転々とするようになります。当時は治療で分からないことや不安があってもそれを医師にうまく伝えることができず、悩むこともありました。そのような中、就職による環境の変化もあって肌の状態が急激に悪化したため、アトピー治療の専門医がいる総合病院を探して受診することになりました。
――納得して治療を続けるには、自分から医師に疑問や希望を伝えることが大切だと学ぶ
総合病院では、はじめに入院しました。医師からアトピーに関する正しい知識を教えていただき、良好なコミュニケーションをとることができました。次第に医師を信頼し、毎回の診察で気になる症状や疑問などを伝えられるようになりました。自分の希望を伝えられるようになったことで、さらに医師との信頼関係が強まり、治療意欲が高まる好循環が生まれたと思います。それらの体験を通じて、症状や治療に対する疑問はきちんと自分から伝えることが大切であると学びました。
就職・仕事
――緊張すると悪化するかゆみに耐えながら臨んだ採用面接
就職先を探していた当時は、不規則な生活によってアトピーが悪化すると考えていたので、夜勤があったり、三交代制だったりする生活リズムが安定しない職種は避けるようにしました。就職活動中は、幸いにもアトピーの症状が少し落ち着いていたので、自信をもって取り組むことができたと思います。ただ、緊張するとかゆみが強くなるので、面接の間だけは絶対に肌をかかないようにと自分に言い聞かせて臨んでいました。最終的に内定をいただいた会社で現在も働いています。
――アトピーによるハンディキャップはなく働けている
就職先は、もともとやりたかったもの作りの仕事でもあるので、没頭している間はかゆみを感じることもありません。また、社内や部署内にもアトピーに悩んでいる人がいて、アトピーのせいで働きにくくなるということはありませんでした。ただ、仕事中に無意識に肌をかいてしまうこともあるので、最初に配属された際の自己紹介で自分にアトピーがあることを伝え、「見苦しいかもしれないけど」と断りを入れるようにしました。
皮膚科を受診する際に心がけていること
――勇気を出して自らアトピーについて相談したことで、医師との信頼が深まった
診察時には、肌の状態をスムーズに診てもらえるよう、事前に情報を整理し、肌が見せやすい服装を意識して受診しています。転勤があり、通い慣れた病院を離れることに不安がありましたが、新しい医療機関でも勇気を出して先生に希望を伝えたことでコミュニケーションが深まり、信頼関係を構築できました。思い切って相談してよかったと思います。
【アトピー患者さんへのアドバイス】
以前の自分は、医師に遠慮して自ら質問することができず、コミュニケーションが不足したことで次第に治療意欲も低下していきました。医師と良好なコミュニケーションをとるには、患者自身がアトピーについて正しい知識を身に付け、随時アップデートしていくこと、自分の状態を自ら医師に説明すること、不安や疑問があれば遠慮せず伝えていくことが大切であると感じます。信頼できる情報源からアトピーに関する情報を収集し、希望や思い描くゴールがあれば勇気を出して医師に相談してほしいと思います。